第4回「ローコード開発ツールのメリット/デメリット」

第4回「ローコード開発ツールのメリット/デメリット」

◆新幹線vs在来線/深夜バス

新幹線vs在来線/深夜バス

図らずも“新型コロナ”の対策のために働き方改革が進んだ結果、以前は敬遠されていた“Web会議”の価値が高まりました。それによってサラリーマンの密かな楽しみでもあった“出張”の機会が減ったのは少し淋しいですね (笑)

例えば東京から大阪へ出張に行く時、“東海道新幹線”を利用するのが普通と思います。値段だけで比べたら在来線の方が安いのに、です。(深夜バスだと数千円で行けるようですね。爆安です!)

なぜ“新幹線”を使うのかと言えばもちろん、その方が早く移動できるからです。

ローコード開発ツールを売り始めた頃、よく「モノが良いのは分かっているんだけど、値段が高くてねぇ・・・」と言われました。そんな時に何度もこの「新幹線vs在来線」の例えを使わせていただきました(笑)

◆ローコード開発ツールのメリット

でも、「新幹線vs在来線」の例えはローコード開発ツールのメリットを説明するためには少々物足りません。
一般的に、ローコード開発ツールのメリットは下記の3つと思います。

<ローコード開発ツールの三大メリット>

(1)開発生産性の向上
最大のメリットはシステム開発工程において最も工数がかかる“プログラミング”の工数を削減できることです。工数の削減により“スピードUpを図る”或いは“コストを削減する”ことができます。コスト削減の別の方法として「オフショア開発」がありますが、仕様理解の齟齬や受入テストに時間や手間が掛かる等の苦労も多く、一筋縄には行きません。ローコード開発ツールではプログラミング工数の削減を容易に実現することができます。しかも同時に以下の2つのメリットを実現することもできます。

(2)品質の向上
ローコード開発ツールは設計情報(定義情報情報)に基づき、一定のルールに従って機械的にプログラミングを行い、実行モジュールを生成します。機械的なプログラミングにはテンプレートを用いたものや、AI、高度な数学を利用したものなど色々な方式がありますが、いずれも人間の手が加わらないため、バグの混入が限りなく“0”となります。(もちろん、ツール自体は人間が作っているので“0”にはなりませんが)このような話をすると必ず「機械的なプログラミングは無駄なコードを生成してパフォーマンスが悪くなるのではないか?」という質問をされますが、システム開発は殆どの場合、複数名のチームで開発します。人数が増えれば増えるほどエンジニアのスキルにバラツキが多くなり、その結果、出来上がったシステムの品質にもバラツキが出ることとなります。ローコード開発ツールが作るプログラムは100点満点のコードではないかも知れませんが、『平均点が95点のシステムができること』に大きな意味があると思います。

(3)保守性の向上
ローコード開発ツールは、開発リポジトリ(呼び方は様々)に定義した設計情報(定義情報)をベースに保守を行いますので、スクラッチ開発のように設計書とソースコードが一致しない、或いは、プログラムソースと稼働中の実行モジュールが一致しない、といった問題が起きません。これにより、保守性(保守生産性)の向上が実現できます。
但し、OS/ブラウザのバージョンアップや新技術への対応など、将来に亘っての技術変化への対応にはツール側での対応が不可欠となる点には注意が必要です。

ローコード開発ツール「NEXACRO BEYOND」のプラットフォーム機能

ローコード開発ツールのデメリット/課題

◆ローコード開発ツールのデメリット/課題

では、ローコード開発ツールの代表的なデメリット/課題についても触れてみたいと思います。

<ローコード開発ツールのデメリット>

(1)ツール/ベンダーへの“ロックイン”
ローコード開発では、初期開発だけではなく、保守においてもツールを使う必要があります。この点はメリットと表裏一体であり、どうすることもできません。企業においてはシステムの継続性はBCPの観点からも大変重要です。導入検討の際、ベンダーおよびツールの実績などから永続性について十分に検討することをお勧めします。

(2)技術者の育成
ローコード開発ツールを導入する際に意外と多く上がるテーマとして「技術者の育成」があります。システムエンジニア(SE)にとっては『システムを完成させること』が最終目標のハズですが、技術者目線では「最新技術を使って“スクラッチ”でプログラミングできないことへの不安/不満」、SIerとしては「最新技術を身に着けた技術者の育成/継承に対する不安」が起き、ローコード開発ツールの導入が進まない、或いは、頓挫してしまうことがあります。
この解決策の一つとして『従来の開発と比べて違和感なく使うことができるローコード開発ツールを選ぶ』ということが上げられます。ローコード開発ツールによる開発方法は千差万別ですが、従来の開発方法と同様の考え方/方法で開発できるツールを選ぶことにより、『SEとしての技術力の育成』と『ローコード開発のメリットの享受』の双方を実現可能なものを選ぶことが重要です。

(3)エンジニアの調達コスト
ローコード開発ツールを導入する上で忘れがちな事柄に「エンジニアの調達コスト」があります。ローコード開発ツールの導入においては、ツール自体の生産性が注目されがちですが、システム開発において全てを内製で行うことは稀で、エンジニアを外部から調達することも多いと思います。この調達コストが高いと、せっかく生産性の高いツールを採用しても、トータルコストがそれほど下がらない(場合によってはスクラッチよりも高くなってしまう⁉)こともあります。エンジニアの調達コストにも目を配るべきと思います。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。次回は「ローコード開発ツールの将来性」について考えてみたいと思います。

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